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2) 原子力発電は温暖化対策に貢献するのか?
原子炉新設計画を促進しようとする一番の根拠は、原子力発電が温暖化対策に貢献するからだという理屈です。ここでは、原子力発電が本当に温暖化対策に役立つのかどうかについて、考えてみましょう。
• 原子力発電は中期的に温暖化対策には貢献しない
欧州連合(EU)は、2020年までに温室効果ガスの排出量を90年比で20%削減する(米国などの工業国、中国やインドなどの新興国が、2013年以降、ポスト京都議定書に参加すれば30%削減)ことを目標としています。
しかし、上述したように、原子力発電所の建設には長い年月が必要ですから、今すぐに建設を開始したところで、2020年までに稼働している原子炉はほとんどありません。つまり、原子力発電では、2020年までの温暖化対策に貢献できないとうことです。
EUは2020年までの中期目標を達成するため、排出量取引をより強化する、発電に占める再生可能(自然)エネルギーの割合を2020年までに20%とする(現在、11.5%)、エネルギーを効率的に利用する(省エネ)ことなどで、目標を達成したいとしています。
• 原子力発電は省エネを妨げる
原子力発電は、技術上の問題などからフル稼働を原則とします。ただ、電力は貯蔵しておくことができませんので、発電された電力は使わないといけません。それで、原子力で発電された電力は電力供給の基盤となるベース電力として使用され、その他に必要な電力は電力需要に合わせて、フレキシブルに運転可能な石炭型火力発電などで発電します。
つまり、原子力の割合が多くなれば多くなるほど、使用しなければならない電力が増え、電力需要に合わせてフレキシブルで、効率的な電力供給ができなくなります。
温暖化対策で最も重要なポイントは、経済が成長しても、電力需要が増大しないようにすることです。そのためには、エネルギーを有効利用して省エネ社会化していくことが必要です。しかし、原子力発電がベース電力として使用される割合が高いほど、その電力を使わざるを得ないので、省エネを促進することはできません。
• 原子力発電は大規模な代替エネルギーを必要とする
原子力発電はフル稼働を原則としていても、原子力発電の稼働率は年80%前後にしかなりません。それは、一部の炉型を除くと、燃料交換のために原子炉を停止しないといけないからです。同時にその時に、定期検査や改造も行われますので、ヨーロッパでは現在、原子炉は年1回、30日から60日前後停止されています。
原子炉の停止時には、たとえば石炭型火力発電が代わりに発電することになりますが、原子炉1基の出力が大きいだけに、そのために備えて、温室効果ガスを発生させる石炭型火力発電の容量を大きくして置かなければなりません。
• 原子力発電で発生する熱は捨てられる
原子力発電によって発生する熱を暖房用の熱や工業用の熱として利用できれば、エネルギーの効率が上がり、省エネになります。しかし、原子力発電所は人口密集地近くには建設できませんし、住民のアクセプタンスを得ることも難しいので、東欧の一部の原子力発電所を除いては、原子力発電所からの熱を地域暖房熱源として利用されることはありません。そのため、熱は利用せず、捨てられています。そのため、原子力発電のエネルギー効率はよくありません。
• 原子力発電によって河川の水温が2度C上がっている
ヨーロッパでは、原子力発電所は川ないし湖から取水して冷却水として利用し、加熱された冷却水を川に戻すか、大きな冷却塔を設置することで、冷やしています。そのため、原子力発電所が取水する河川や湖では、水温が2度Cほど上がっており、これ以上水温が上がると、周囲の生態系など環境に大きな影響が出る可能性があります。
つまり原子力発電は、温暖化に貢献するひとつの要因ともなっています。
特にヨーロッパでは、ここ数年来、夏が猛暑となって降水量も少ないので(スペインなど南欧では干ばつとなっている)、川の流量が少なくなると同時に、水温も高くなるので、川の水を冷却水として利用できないことが度々起こっています。そのため、夏期になると、原子力発電所の出力を下げたり、停止せざるを得ない事態も発生しています。
• 原子力発電は多量の水を必要とする
火力発電は温室効果ガスを排出するので、温暖化の大きな発生源だとされています。同時に、火力発電は熱を発生させて蒸気を作り、その蒸気でタービンを回して発電するので、発生した熱を冷却するために多量の水を使います。
ただ、地球が温暖化する中において、人間の生活に必要な水を確保することが、今後、たいへん重要な課題になっていきます。
原子力発電と火力発電の違いは、熱を発生させる方法が違うだけで、その後の発電プロセスに大きな違いはありません。ですから、発電に使用される水の平均消費量(冷却水など)は、石炭型火力発電で3.8リットル/kWh、天然ガス型火力発電で3.7リットル/kWh、原子力発電で3.2リットル/kWhと、原子力発電においても多量の水を必要とします。
将来、温暖化に伴って水不足が心配されるだけに、原子力発電も火力発電と同様、水の問題で大きな障害となる危険があります。
• 原子力発電は地層を汚染する
温暖化が問題視されるのは、単に地球が温暖化して環境に影響が出るからということだけではなく、その根底には持続性の問題があります。つまり、温暖化によって次世代の人類に現在われわれが享受している環境を引き継ぐことができなくなるという世代間の問題です。
この持続性の問題は、地球の大気ばかりでなく、地層にも適用しなければなりません。原子力発電によって発生する放射性廃棄物は、地層に最終処分されることになります。しかし、われわれは放射性廃棄物によって『汚染』された地層を次世代の人類に残していってもいいのでしょうか。
(2008年11月2日) |